太陽がほしかった王様(7/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

目の下には、見渡す限り、雲の海原が広がっています。空は青く、水を打ったような静けさです。
でも、耳をすますと、かすかに、キーンと、ガラスをはじくような音がします。

「何だろう?」
見上げると、そこに太陽がありました。ダイヤモンドのような、固く、すんだ光を放っています。
「おお、何というまばゆさじゃ!」
王様の太陽を取りたい気持ちは前よりもっと強くなりました。
でも、今度は憎らしいからではありません。

「あれをわが宮殿の屋根に飾ったら、さぞや、ごうせいに輝くことじゃろう。さあさ、早く、取っておくれ」
王様は、せっかちに、お坊さんをうながしました。
すると、お坊さんは、
「では、ちょっと、失礼いたしますよ」
と言って、片手を、すうっと、王様の胸に差し入れました。驚いている間もありません。
お坊さんが手を引き抜くと、そのてのひらに、つるつるした、あわいピンク色のきれいなつぼが乗っているではありませんか。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに