ヒュルンと木の葉がゆれました。王様は木もれ日の下で目をさましました。
「夢じゃったか・・・」
でも、見ると、王様の足にはヤブクサがからまり、切れて、血まみれになっています。
王様は立ち上がって、耳をすませました。小鳥がさえずっています。ミツバチの羽音も聞こえます。
お妃たちが、花をつみながら、歌っているのも聞こえてきます。
「だれかある」
王様が呼ぶと、すぐに、しわくちゃ大臣が進み出ました。
「はい、ここに。ご用は何でしょうか」
王様は、思わず、大臣の肩を、ぎゅっと、抱きしめました。
涙が、ぽろぽろ、ほほを伝わりました。
「王様、いったい、どうなされたのですか!」
びっくりしている大臣に、王様はまじめな声で言いました。
「国中のお寺に伝えてくれ。わしの愚かな命令で命を落としたたくさんの兵士や象たちのために、お祈りをささげてくれるようにと」
大臣が下がると、王様はていねいにくつをはきました。
それから、花園の中を、ゆっくり、歩き始めました。
ひとつひとつの樹木や花々をながめ、ミツバチのささやきや、小鳥の声に耳をかたむけながら。