幼年童話の書き方15 ~第2部「名作に学ぶ」その3

その3『きいろいばけつ』

絵本『きいろいばけつ』表紙画像

『きいろいばけつ』 もりやまみやこ・作 つちだよしはる・絵 あかね書房 1985年

どの文も短くてシンプル

第1部その4で、「幼年童話の文章はシンプルとリズミカルが基本です」と書きましたが、今回の『きいろいばけつ』はそのお手本となる本です。

幼年童話の中でも、これは文章を読み始めて間もない、読書経験の少ない子どもたちが読者対象になる本です。
話が始まる見開き1ページ目はこうです。

げつようび
きつねの こが まるきばしの たもとで、きいろい ばけつを みつけました。
「だれのだろう?」
きつねの こは、ばけつを まうえから みおろしました。なかに、ほん
の すこし みずが はいっていました。

どの文も短くてシンプルです。修飾語も必要最小限に抑えられているでしょうか。これはもう、描写が薄いなんてもんじゃないです。もちろん、その分、挿絵で補っているわけですが。
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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。