捨てる神あれば拾う神あり

おてつだいおばけさん』の出版を振り返って

おてつだいおばけこのお話は、毎日小学生新聞の日曜版「こどもしんぶんようねんどうわコーナー」に連載されたもので原題は『おばけはけん』というものです。
連載は、2012年10月7日~11月25日まで計8回でしたが、日曜日ごとのお話なので、毎回読み切りの設定になっていました。

冒頭に、前回までの説明を入れるのが決まり。文章も就学前の子どもが理解して楽しめるようにと、工夫しました。

連載が終わると、本にしてくださるという出版社があって、作者、画家、編集者でチームを組んで出版に向け取り組んだものの、
★「はけん」という言葉が差別的なものではないだろうか?
★物語に登場するおばけの種類が妖怪と幽霊とが混合しているのでは?
★主人公の「チビ」は実際に小さい人を傷つけたりしないだろうか?
などなど・・・。
編集者の厳しい言葉に、それまで楽しく書いていたお話が、書き直すたびに自分の中では、ここを外したら楽しさが失われる・・・というそこはかとない悲しみに変わり、削除、推敲、ダメ出し、の繰り返し。苦しくて、もう書くことをやめてしまおうと思いました。

弱気な私の気持ちは、チームの覇気に反映し、結局出版されないまま、チームは解散となりました。
それから二年ほど経ってひょんなことからその作品を読んでくださった別な出版社の編集者さんから、本にしましょう!と言ってもらえた時は、涙がでるほど嬉しかったのを覚えています。

そしてまたさらに書き直しをしましたが、今度は思うようにのびのびと書かせてもらい、楽しい作業となりました。
まさに、捨てる神あれば拾う神あり、です。諦めずに、作品を大切にしていてよかった! 子どもたちの手元に届けられてよかった!とつくづく思っています。

絵も、新聞連載時と同じで、長谷川知子さんです。こども新聞では、主人公の女の子を小学一年生、と設定していましたが、単行本は、「小学生の女の子」になったので、低学年から高学年まで楽しめるように、主人公がちょっとだけ成長した姿になっています。
そんな紆余曲折を経て誕生した『おてつだいおばけさん』シリーズになりました。

●購入サイトはこちらから → 『おてつだいおばけさん

季巳明代(きみ あきよ) について

鹿児島県出水市在住 保育士時代に公募にはまり、幼年童話作家をめざす。 毎日童話新人賞優秀賞、新美南吉童話賞特別賞、など受賞多数。 作品に『てんぷら母ちゃん』(家族っていいね3・4年生収録/日本児童文芸家協会編/PHP研究所)』 『ウドちゃんとチョロくん』(ぼくたちの勇気)収録/編著/漆原智良/国土社)』 『よっていっきゃんせ!』(児童文芸収録/日本児童文芸家協会編)』 単著に『ひげなしネコ』『じゅんばんこ!』『四年変組』『りほちゃんのめざし』(以上フレーベル館)、『ひっこしはバスにのって』(銀の鈴社)。キンダーブック2に、『にんにんにんじゃえん どろろんぐみ』を連載中。(いずれもフレーベル館