翌朝ぼくは、べにちゃんが迎えに来る前に、家を出ていった。
こんなこと、ぼくとべにちゃんとの通園・通学人生、始まって以来のことである。
学校へはいかなかった。
学校へいけば、べにちゃんと会わなければならない。
ぼくは、ぼんやりしてあてなく朝の町中をうろうろとさまよった。
誰も通らないような横っちょに入り、取り壊しが終わって誰もいないビルディングの敷地を横断し、誰も入らないしめった林を通り抜けた。終始うつむき、ただただ歩いた。
まるで夢遊病だ。
べにちゃんがいないところだったら、どこでもいい・・・、この世界にはべにちゃんがいる、だからぼくは、この世界の外にいくしかないのだ。
何も考えてなかったのに、気がつくとそこへたどりついていた。世界の外というわけではなかったが、ここは生きている者と亡くなった者との中間点といえる。
羽衣川のほとりにある、天が原セレモニー。
小竹おじさんが昇っていった、おだやかな地。
ここはとても落ち着く。
水田と畑、あしの大草原、羽衣川を見渡して、ぼくは草の上へ座り込んだ。