帰り道。
ぼくは、べにちゃんに、どうしても話さなければいけないことがあることに気がづいた。それは今でも話したくないけど、べにちゃんに嘘をつくことはできない。
どうやって話すべきか考え、300秒ほどたったあと、意を決して話し出す。
「べ、べにちゃん、・・・ネクタイは、あの、その、手紙を・・・」
ネクタイがべにちゃんをどう思っているか、話そうとした。
するとべにちゃんは、一度立ち止まった。
そしてこっちを見ずにいった。
「・・・うん。わたしふられちゃったね。伊集院くんから、気持ちは嬉しいけど今は受けられないって、丁寧な手紙をもらったわ。・・・でも、わたし、あきらめない。中学だって同じだもの、いつか、振り向いてくれるかもしれないじゃない・・・。」
それからべにちゃんは五歩進み、今度はしっかり振り向いていった。
「それよりたけちゃん、伊集院くんと取っ組み合いのけんかをしたでしょう? 伊集院くんにきいても、わたしには関係ない男と男のけんかをしただけだって、ちっとも取り合ってくれないのよ」
ん?
「・・・ネクタイのやつ、ぼくの悪口、なにもいわなかったの?」
「うん、ちっとも。それどころか感心してた感じよ。あいつは偉い、あいつは偉い、ぼくは大事なことを教えてもらったんだ、って。・・・でもそれならなんでけんかするのかなぁ? わたしにはちっともわかんない」
・・・意外だ。