暗号の意味 ーーBOOK展2023より

文と絵・田村理江

自分では満足でも、なかなか評判は得られない。アップしても売れるはずないよね、と思ったら・・・。
「あらら?」
スマホのメールが鳴り出す。開いたら、今、アップしたばかりの作品への、購入希望メールだった。

「うそみたい。売れた」
今までにないことだ。嬉しかった。ガリ版のレトロなタグが良かったのかも。それに、「SNSは投稿のタイミングも重要って言うじゃない?」
チラリとガリ版機に目をやる。ロウ紙を全部、開いてみると、一枚ずつの紙に、(S12.11)とか(S12.15)とか、違う数字が書かれている。
「これは・・・」

Sは、紗彩のイニシャル。数字は、投稿すべき日にちを指定した暗号かも。なんだか、そんな気がする。
ママに話したら、
「なーに、バカなこと言ってるの」
と、大笑いされた。
「さあさあ、もうすぐおばあちゃんが遊びに来るから、あなたも用意を手伝って」
やって来たおばあちゃんは、私がガリ版機を買った話をすると、「まぁ、懐かしい。見せて」
と、興味を持ってくれた。リビングに青銅色の箱を運んできたら、おばあちゃんは驚いた顔をした。

田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ