少しずつ近づいていきました。
なんだか屋台のお店の電気の光のように見えたのです。
あんなところに店があるなんて。いったい何のお店だろう。
そう思ってどんどん足を進めました。
そのうちお祭りの明かりはすっかり見えなくなり、あたりは真っ黒な色に包まれていました。
そしてその中に―――やはり思ったとおり、お店が一軒ポツリと。
お面屋でした。
それはちょっと不気味な光景にも見えました。
闇の中に白い明かりに照らされて、顔がいっぱい並んでいるのですから。
しかもよく見ると、その顔たちはなんだか変でした。
お祭りのお面屋さんで売っているものは、みんな可愛いものやかっこいいものばかりです。それなのに、ここのお面はちょっと違う。
カニがいたのです。カニのお面なんて見たことありません。
ライオンもいます。ウサギもいます。それは案外普通かもしれません。
人間の顔もあります。お姫様なのに、なんと横顔です。横顔のお面なんて見たことありません。
そしてひげだらけのおじさんの顔。おばあさんの顔まで。
すくなくとも、トモちゃんはかぶりたくありません。
「なんだこのお面屋・・・」
唖然としているトモちゃんの耳に何か声が聞こえてきました。誰かが小さな声でぶつぶつつぶやいている声です。
「・・・かいな・・・月夜の・・・ネコ・・・」
お面の並んでいる棚の端っこの方に誰かいました。うつむいています。
店の人でしょうか。小さな台を置いてお金を数えています。銅貨や銀貨を丁寧に手袋をはめた手で動かしています。