月夜のネコかいな(2/4)

「あのう」
トモちゃんが声をかけてみました。
ちょっとびくりとして、顔を上げたその顔にはネコのお面がつけられていました。
トモちゃんもちょっとびくりとしました。
「なんでお面つけてるの?」
トモちゃんが聞きました。
「お面屋だからさ」
子供と大人が混じったような男の声でした。

「なんで変なお面ばっかり売ってるの?」
「変なお面屋だからさ」
お面屋はまた下を向き、お金をかぞえるのを再開しました。
「月夜のネコかいな・・・月夜のネコかいな・・・月夜の」
「何それ、変な数え方」
トモちゃんの声も聞こえないかのように、ぶつぶつ。
「ネコかいな・・・月夜の・・・」

トモちゃんが少し声を大きくして近づきました。
「ひいおばあちゃんがね、教えてくれたの。数える時は、チュウチュウタコかいなって言うのよ」
お面屋がキッと顔をあげて言いかえしました。
「こんな月の綺麗な気分のいい晩に、チュウチュウなんて言葉使わないでくれ」
どうやらネコになりきっているようです。ネズミが嫌いなのでしょう。
トモちゃんは質問を続けます。
「どうしてもっと賑やかなとこでお店出さないの? こんなとこにお客さん来ないでしょ」
「いいんだよ」
「なんで?」
「お客は来るんだよ」
トモちゃんはびっくりしました。

夏美 について

大阪出身。童話やミステリーが好きで、少年探偵団や少女探偵ナンシーで育ちました。自分もそんな感じの、子供がワクワクできるようなミステリーやサスペンスを書けたらいいなあと思っています。ようやく落ち着いてパソコンに向えるようになった主婦です。尊敬する人はグラン・マ・モーゼスです。