村上春樹作品翻訳家ジェイ・ルービン先生インタビュー

-戦争の悲惨さを理解してほしい-
日本文学研究家として、また、村上春樹作品翻訳家として知られるジェイ・ルービン先生が、長編小説『日々の光』を日米で同時出版されました。 出版イベントで来日されたルービン先生に、このたびの出版についてお話をうかがいました。

―― 『日々の光』は日系人収容所で生き別れた「母と子」の、愛と苦悩の運命を描いたものですが、これは30年前に書かれたとお聞きしましたが。

1941年ワシントンD.C.生まれ。ハーバード大学名誉教授、翻訳家。芥川龍之介、夏目漱石など日本を代表する作品の翻訳多数。特に村上春樹作品の翻訳家として世界的に知られる。

そうなんです。1985年から2年かけて書きました。 出版エージェントに持ち込んだのですが、当時は完全に無視されてしまいました(笑) まだ無名の書き手でしたからね。
でも村上春樹さんの作品を翻訳できるようになったこと、そして戦後70年を迎えるにあたって、アメリカでも日系人の強制収容に対する関心が高まってきたこともあって、今回は出版がすんなりと決まりました。
戦後50年、60年という節目には、アメリカでもそれなりに関心が出てきましたが、今年は戦後70年。人生でたとえると、一区切りとも言えますね。この機会を逃すと、永遠にこの本が世に出ないと思いました。出版できて本当に良かったと思っています。

―― 本書で一番訴えたかったことは、どのようなことでしょうか?

世の人々に戦争のことをもっと知ってほしいということです。
戦争とはどれほど悲惨で、そして人それぞれの人生を潰すことになる、ということをしっかりと理解してほしいのです。
とくに政治を司る人は、「戦争の悪」をしっかりと認識してほしいのですね。

―― 本書はどのような人に読んでほしいですか?

Jay先生アップもともとはアメリカの人たちに向けて書いたものなのですが、日本での翻訳出版もできたので、戦争を体験していない人たち、特に若い人たちには読んでいただきたいですね。
ギリシャ時代から人々は反戦文学を書きました。現代においては反戦文学に加え、反戦映画も作りますが、戦争はいっこうになくなりません。
反戦文学や反戦映画なんて、戦争をなくすことにつながらない、無駄だという人もいます。
でも、ジョン・レノンが「イマジン」という曲でも訴えているように、空想家、夢想家と言われようが、「戦争はやめようと」とみんなが一つになって、積極的に声を上げていけば、戦争のない平和な世界をつくることができると私は思っています。

日々の光書影日々の光』 ジェイ・ルービン 著 柴田元幸+平塚隼介 訳 新潮社
日系人収容所で生き別れた「母と子」の、愛と苦悩の運命――戦後70年、日米両国で注目の長編! 忘れえぬ「母」の記憶を抱いて日本へ――戦争で引き裂かれ、数奇な運命に翻弄される主人公ビル・モートンと「母」光子の愛と苦難に満ちた人生が、戦前のシアトル、戦時下のアイダホ州ミニドカ日系人収容所、昭和30年代の東京・九州を舞台に交錯する。
村上春樹作品の英訳で知られる日本文学研究者が戦後70年に向う渾身の長編小説!(Amazonより)

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