男の子が、のどがかわいたと言うので、オオカミは、男の子を川のそばに運んだ。
「ほら、飲め。水じゃ太らんだろうがな」
オオカミがうながすが、男の子は、じっと川をのぞきこんでいる。
「どうした?」
「あのさぁ、これ、飲んでも大丈夫な水だよね?」
「はぁ?何を言ってるんだ。水は水だろ」
「いや、でもさ。生水は、おなかこわすかもしれないでしょ。ミネラルウォーターとかないの?」
「みねらるうおーたぁ? 何だそれは?」
「だから、ほら。富士山の水とか外国の水みたいな、体にいいやつ。パックっていうか、ペットボトルに入ってて、お店で売ってるやつ」
「何だって? この豊かな川を前にして、パックづめの、外国の水が飲みたい? まったく、人間ってやつは・・・」
オオカミ、思わずアオーンとなげいた。
(なんだかんだ言っても、オオカミのやつ、いっしょうけんめい、食べものや飲みものを探してくれてるよね。ぼく、ちょっとわがまま言いすぎたかも)
男の子は、ちょっとだけオオカミにもうしわけなくなって、それ以上文句を言わずに、川の水をのんだ。