シュッ!
オオカミが、えものめがけて、とびかかった。
えものは、いっしゅんビクッとして、すぐにうごかなくなった。
「どうだ。ウサギなら、人間も食えるだろ。おれも食うから、半分こしよう」
オオカミが、くわえていたウサギをぽとりとおとす。丸々とした、
なかなかおいしそうなウサギだ。
「うん。ウサギは食べたことないけど、やいてくれれば食べられると思うよ」
男の子が言うと、オオカミが首をかしげた。
「やいてくれれば?ヤイテクレレバってなんだ?」
「だからさ。フライパンにあぶらをしいて、じゅう~って、料理するんだよ。生のままじゃ、食べられないから」
「おいおい、いいかげんにしてくれ。オオカミのおれが、そんなことするわけないだろ。生のままがいやなら、おまえが自分でどうにかしろよ」
「えっ」
男の子はしばらく、ウサギを見つめていたが、
「・・・むりだよ。お肉はふつう、スーパーとかで買うんだ。こう、ちゃんと切り分けて、パックづめになっててさ。そのままやけばいいように、なってるんだよ。こんな、丸々一匹のウサギなんて、どうしたらいいか、分からないよ」
と、泣きそうなかおをした。
オオカミは、思わず天をあおいだ。