おなかがいっぱいになったオオカミは、森の出口まで、男の子を運んでくれた。
「ほれ、人間の使う、固い道が見えたぞ。左にまっすぐ行けば、町のはずだ。一人で、歩いて行けるか?」
心配するオオカミに、男の子は笑顔を向ける。
「うん、大丈夫。水を飲んで、少し元気になったし。いろいろ、ありがとね。何か、ごめんね。ぼくのこと、食べさせてあげられなくて」
「まったくだ。おれがあんなに、がんばったのに、お前ときたら、全然太ろうとしないんだからな」
「あはは、ゴメンゴメン」
男の子は、オオカミと握手をかわした。ズシリと重い前足を男の子の手にのせながら、オオカミは、なごりおしそうな目で男の子を見た。
「また、森に来るか?」
「どうかな。もう、森はこりごりだなぁ」
「そんなこと言わずに、必ずまた来い。いいか。町に戻ったら、しっかり食え。そして太れ。次に森に来た時は、おれがちゃんと食ってやるから」
「やなこった」
男の子は、もうパパが何と言おうと、一生、ガリガリにやせていようと、心に誓った。