その夜、楽しい誕生祝いがすんで、ベッドに入ったアウロラ王女は、とつぜん、高い熱にうなされ始めました。
熱は何日も続き、やっと、それがおさまった時、両足が、すっかり、なえて、歩くことができなくなっていました。
王さまは、あちこちから名高い医者を呼び寄せて、けんめいに治そうとしましたが、アウロラの足は、いっこうによくなりませんでした。その上、人々の間に、「あれは魔女ののろいにちがいない」「王さまが戦争ばかりして、森を、人の血で汚したばつだ」という、悪いうわさが立ちました。
「ええい、うっとうしいうわさじゃ。今後、王女を人の目にふれさせてはならぬ」
王さまの命令で、幼いアウロラは、お城のいちばん高い塔の部屋にかくされ、1日中、窓の外だけをながめて暮らすことになりました。
10年の月日が流れました。王妃さまは、相変わらず、くつとドレスとパーティに夢中で、王さまと言えば、戦争ばかりしていましたから、国は荒れ放題になっていました。
そして、とうとう、ある時、王さまは、ひとり、敵の中に突っ込んで行ったまま、行方が分からなくなってしまいました。
知らせは、すぐに、お城に届きました。それを聞いた王妃さまは、
「では、いったい、私の新しいドレスの代金を、だれが払ってくれるのですか」
と、眉をつり上げました。それから、「はあっ」と、ため息をつきました。
「この世界のどこかに、黄金と宝石の国があると聞きます。そこへ行くことができたら、どんなによいでしょう」
その晩も、王妃さまは、いつもどおりに、にぎやかなパーティを開きました。一晩中、踊り続けたせいで、ひどく体のほてった王妃さまは、
「ちょっと、涼みましょう」
と、庭に出ていきました。しばらくして、ついて行った侍女だけが戻ってきて、ふるえながら言いました。
「王妃さまが涼んでいらっしゃると、いきなり、地面が割れて、世にも美しい国が現れました。黄金の川が流れ、宝石の木がそよいでいるのです。王妃さまは、
『ああ、うれしい。やっと、私にふさわしい場所が見つかったわ』
と、階段をかけ下りて行かれ、止める間もありませんでした」
人々は、あわてて、その場にかけつけましたが、地下の国は、もう、ぴったりと閉じていて、王妃さまのせんすだけが、ぽつんと、落ちていました。
その後、王妃さまがどうなってしまったのか、だれにも分かりません。