困ったのは大臣たちでした。何しろ、たった1日のうちに、国王と王妃が消えてしまったのですから。
「これを知れば、まわりの国ぐにが、すぐにも、戦争をしかけてこよう。急いで、何か、手を打たねばならぬぞ」
「こうなれば、アウロラさまにお婿さまを迎えてもらうしか、あるまい」
さっそく、大臣たちは、塔の部屋にアウロラを訪ねました。
「アウロラさま、どうか、そっこく、お婿さまをお選びください。この国を任せられる、すぐれた国王が、今すぐ、必要なのです。どのお方になさいますか」
アウロラは14歳になっていましたが、それよりは、ずっと、あどけなく見えました。そして、とつぜん、両親を失って、つぶらな目を涙でいっぱいにしていました。
それなのに、大臣たちは、年頃の王子さまたちの姿絵を、つぎつぎに、アウロラに見せました。
「いやです。いや、いや」
アウロラが首を振るので、大臣たちは、ずいぶんと若い王子さまや、ひどく年寄りの王子さまの姿絵までも見せて、アウロラにつめよりました。
とうとう、アウロラは、顔をしかめて言いました。
「私のお婿さまは、もう、決まっています。そのお方は、この塔の窓から見える、あの若者です」
「何ですと」
大臣たちは、すっかり、めんくらってしまいました。
そこに見えていたのは、麻袋から種をつかんで畑にまいている、農夫の息子だったからです。