リンゴ王妃は、しばらくの間は、めそめそ泣いて暮らしていましたが、そのうちに、いやなこともわすれて、リンゴ売りの父親のもとでただのリンゴ売りの娘にもどり、市場で元気に働くようになりました。
そしてある日、気立てのいいパン屋と結婚して、10人の子供のおっかさんになり幸せに暮らしたのです。
娘の打ち明け話を思い出すと、父親のリンゴ売りが、最後までひとつ分からないことがありました。魔女が教えたあのおまじないのことです。
アルセイダ・ダルムシュタ・ディドー
あれは、いったいどんな意味だったのでしょう?
「たぶん『ディドーはアルセイダの夫ではないぞ。こんりんざい、こいつを守るこたあ、ねえぞ』って、そんな意味だったんだろなあ」
リンゴ売りは、小さく縮んだ湖と豊かにもどった森をながめながら、ふとそんなことを思うのでした。