沖縄戦の惨劇を伝える

◆私たち一人ひとりの役目

終戦から77年が経ち、私たちは平和ボケしているとも揶揄されますが、その過去の出来事を知ること、大人として子どもたちに伝えていくことよって、同じ苦しみや悲しみを経験して欲しくないという方たちの願いを継承することになります。
絵本という媒体を通して戦争を伝える意味というのがそこにあります。

田島さんの染色作家としての特徴な作風でもある絵もまた注目すべき点です。
今年で82歳とは思えない、現役の力強いパワーが込められた作品の数々はどれも素晴らしいもので、この絵本の魅力をより一層高めています。

布の持つ柔らかい質感の上に描かれた沖縄の美しい緑や赤を鮮やかな花々の色、自然の風景もさることながら、それとは対照的な赤や黒、茶などの色味が基調となった戦火の惨状は私たちに強いメッセージ性をもって訴えかけてくるようです。

自分たちの命というのは何層にも重ねられたたくさんの命の上に成り立っています。
同じ国を生きた先人たちの経験を、自分の人生の背景、土台として認識することで、今をどう生きるのかということも変わってくると思うのです。

過去から学ぶ、過去の悲惨な出来事を繰り返さない努力をすることが後世を生きる私たちの一人ひとりの役目でもあるではないでしょうか。
この絵本は年長組から小学生にかけて読むことをおすすめします。
教育の一環としても、沖縄戦という日本の歴史をぜひ伝え続けて欲しいと願っています。

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】