12 追跡
「あっ・・・」
オレの感覚が、機能し始める。
おにぎりを腹に入れている間に、冬の遅い太陽が、すっかり顔を出したのだろう。
「明確な位置は、まだ掴めませんが、照準、ほぼ、合いました!」
「でかした、アキラ、チャッピーはどこにいる? 何丁目何番地にいるんだ?」
椅子を蹴り飛ばし、猿神さんが立ち上がる。
「住所まではわかりませんが、方角は北です! 少し遠い場所かもしれません」
「遠い場所で、方角は北、しかし住所はわからんと言うのか? どうなってるんだ、その猫アンテナは」
「実は、オレもわからないんです。どういう風に導かれていくのかも、その仕組みも」
目で物が見えるように、耳が音を感じ取るように、ただ見える、ただ感じる。
それだけだ。
目的の猫に、すぐにたどりつけることもあれば、そうでないことも、ある。
「そうか。で、遠い場所で、ワシのチャッピーは、なにをしている? いやいや、それは、いい・・・、いや、よくない! が、遠い場所って、チャッピーは、チャッピーは、誘拐されたのか?」
取り乱す猿神さんに、かける言葉が見つからなくて、頭に浮かぶ様子だけを告げる。
「銀色の台の上、透明なカプセルの中で、目を閉じています。眠っているみたいです」
「チャッピーは、閉じ込められているのか?」
「わかりません」
「チャッピーは、無事なのか? そうじゃないのか? いやいやいや、無事・・・、に決まっている! 急ごう、アキラ!」
ついさっきまでは、見向きもしなかったおにぎりを、一気に2個をたいらげると、
「キャロちゃんで行く!」
猿神さんは宣言した。