猫アンテナ狂想曲(12/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

 12 追跡

「あっ・・・」
オレの感覚が、機能し始める。
おにぎりを腹に入れている間に、冬の遅い太陽が、すっかり顔を出したのだろう。
「明確な位置は、まだ掴めませんが、照準、ほぼ、合いました!」
「でかした、アキラ、チャッピーはどこにいる? 何丁目何番地にいるんだ?」
椅子を蹴り飛ばし、猿神さんが立ち上がる。

「住所まではわかりませんが、方角は北です! 少し遠い場所かもしれません」
「遠い場所で、方角は北、しかし住所はわからんと言うのか? どうなってるんだ、その猫アンテナは」
「実は、オレもわからないんです。どういう風に導かれていくのかも、その仕組みも」
目で物が見えるように、耳が音を感じ取るように、ただ見える、ただ感じる。
それだけだ。
目的の猫に、すぐにたどりつけることもあれば、そうでないことも、ある。

「そうか。で、遠い場所で、ワシのチャッピーは、なにをしている? いやいや、それは、いい・・・、いや、よくない! が、遠い場所って、チャッピーは、チャッピーは、誘拐されたのか?」
取り乱す猿神さんに、かける言葉が見つからなくて、頭に浮かぶ様子だけを告げる。

「銀色の台の上、透明なカプセルの中で、目を閉じています。眠っているみたいです」
「チャッピーは、閉じ込められているのか?」
「わかりません」
「チャッピーは、無事なのか? そうじゃないのか? いやいやいや、無事・・・、に決まっている! 急ごう、アキラ!」
ついさっきまでは、見向きもしなかったおにぎりを、一気に2個をたいらげると、
「キャロちゃんで行く!」
猿神さんは宣言した。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。