みあんに足を踏み入れ、吹き抜けの天井に目を奪われた。
中央に設置されたエスカレーターも、とてもステキだ。
一直線に天に向かい伸びているように見える。
そう。みあん食品の中には、意外とすんなり入ることができた。
ここは、団体見学だけではなくて、個人見学も受付だけでOKだった。
来る者は拒まずらしい。が、それゆえに、警備体制もしっかりしているようだ。
濃紺の制服に身を包んだシェパード連れの、ガードマンが行き来している。
「チャッピーは上の階にいます」
見学者が自由に行動できるのは2階までだ。
そこに、2階に、いてくれますように!
願いつつ、長いエスカレーターに乗る。
が、着いたとたん、アンテナが微妙にゆらいだ。
「まだ、上、ですね…。あっ、いや、そうでもないのか? ・・・下???」
2階の手すりから、身を乗り出して、下をながめる。
「あれだ!」
エレベーターの扉が開いた。
乗っていたのは、長身の女性がひとり。
「ええええーっ!」
「どうした、アキラ」
「オレ、あの人、見かけました! チャッピーを捜している時に!」
「あの美人が犯人なのか?」
光沢のあるグレーのパンツスーツ、きりりと着こなしたその人は、カツカツと靴音を響かせながらワゴンを押している。
ワゴンの上には、濃い茶のゲージ。
「犯人かどうかはわかりません! でも、チャッピー! チャッピーは、あのゲージの中に!」
「よし、取り返そう、奪い取ろう、そして、さっさと帰ろう」
「そんな強引な手段は取れません! 猿神さん、頭を冷やしてくださいよ!」
「なにー! ワシはいつだって冷静だっ!」
オレたちの大声を聞きつけて、シェパード連れが、振り返り、こちらにやって来る。