「私は津軽海といいます」
猿神さんに向かい自己紹介した父さんが、オレの目をじっと見つめる。
優しくて、温かい目だ。
父さんの目の奥には、こどもの頃のオレがたくさんいるのかもしれない。
そんな風に感じられた。
「なぜ、ここに?」
「アキラ、私は、おまえが、今でもあの能力を持っているのかどうか、知りたかったんだ。私の不注意で、おまえに備わってしまったあの能力だよ」
ゆっくりと父さんが語る。
「おまえがあのフードを食べた後、身体はしっかり検査したんだ。だが、ある日、近所の公園にみんなで、母さんとおまえと私、みんなで出かけた時だった」
「公園に?」
「昔、住んでいた町の公園だがね。そこで猫を捜している女性に会ったんだ。彼女は猫の写真を見せながら捜していた」
その写真を見たとたん、オレは走り出し、近くにひそんでいた猫を見つけた、らしい。
オレは、まったく覚えてないけど。
「その様子を見て、私は、後でおまえに聞いてみた。どうして猫のいる場所がわかったのかと」
それもオレは、覚えていない。
「すると、おまえは、きょとんとした顔で、私に言ったんだよ。なんか、わかった、と」
3歳児のオレ、語彙が貧困だったんだ・・・。
「おまえがどういう風にわかったのかは理解できなかったが、私は、おまえを実験に使いたいと思ってしまった。そして、それを察した母さんは激怒した。我が子を実験台にするなどもってのほかだと」
父さんの眉間に、深いしわが刻まれる。
「・・・すまない、話がそれてしまった。とにかく、私は、今のおまえを知りたかった」