「それにしても黒岩、おまえ、なぜここにいた? 連絡もよこさないで」
「すみません。実は、僕、自分の携帯番号、覚えていませんでした。先輩に連絡を入れようとした時に、気づきました」
「チャッピーは連れていかせる、携帯番号は覚えていなかった、だと!」
「ですから、ここで、待機しようと思っていたのです」
そこへ、ソナさんに続いて、道端で犬田さんの催眠にかかったオレたちが、黒い車のリアシートに揺られ、ここに帰ってきた。
「ここは、とりあえず、家に入ってもらってぜんざいだろうと判断し・・・」
この状況に、なったわけか。
それにしても、黒岩さんって・・・。
かわいそう過ぎる気が、しないでもない。
そんなことを思っていると、突然に、
♪ 悪人どもを なぎたおせ
♪ たたかえ たたかえ
♪ ワアアイルド キャアアアツッ!!!
オレのポケットの中で、大音量が鳴り響く。
あわてて受話器マークを押すと、
「金太、昨日のデート、」
聞き覚えのある声が飛び出してきた。
オレは、黒岩さんに、携帯を差し出した。
「亰ちゃん! 僕は、」
話し中の黒岩さんの、携帯に猿神さんが手を伸ばす。
「この番号は、猿神の都合により、現在使われておらんのじゃ!」
通話終了ボタンを押して、
「黒岩、おまえの不始末は、これで、チャラにしてやろう!」
泣きそうな黒岩さんのおでこを指で弾いた。
「い、痛いじゃないですか・・・。でも、先輩、ほんとうにこれで、チャラにしてくださいよ」