オレたちは、雪道を急ぐ。
広い道路は、早朝からブルが入り、2車線以上確保されてはいるが、脇道はまだまだひどい状態だ。
ブルに押しのけられ、路肩に積まれた雪が、狭い道幅をなおも狭め、顔を出しているのは、ギリギリの1車線。
そこを、車が走り、人が歩く。
雪の上、スリップしながら、よろけながら、自転車をこぐ強者も、いる。
「そろそろ目的地周辺だな」
猿神さんが辺りを見回し、住宅地図を確認している。
依頼主、丹田生代さんは、寒い中、表に立って待っていてくれた。
細い体に毛糸の赤い帽子をかぶり、白いストールを巻いた姿は、丹頂鶴を思
わせる。
「猿神寅卯です。そして、」
猿神さんが、自己紹介しろと、オレを見る。
「第1助手の朝日輝です。早速ですが、行方不明のハナちゃんの写真を見せ
てください」
家の中でお茶でもと、すすめてくれる丹田さんに、
「一刻も早く見つけてやりましょう。外には野良猫もいるんです。ずっと家
の中にいたハナちゃんは、怯えているかもしれません」