猫アンテナ狂想曲(4/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「ここだ!」
「丹田さんの裏側の家じゃないか」
表札を確認し、立派な門に付いているインターホンを、猿神さんは親指で押した。
「こんにちは、桑本さん。ワタシ、猿神探偵事務所の猿神寅卯という者です。・・・探偵ですって! 怪しい者では、断じてない!」
「わっ、猿神さん、怒っちゃダメですって!」
あわてて袖をひくと、サングラスをかけている。

「もう、まったく! いつの間に!」
髪はぼさぼさ、細身だが筋肉質の大男。
黒い帽子、黒いダウンジャケット、黒いパンツ。それに黒いサングラスなんかしちゃったら、怪しさ満載じゃないか!
猿神さんを押しのけて、オレがインターホンの前に立つ。
「猫を捜しているのですが、お宅のガレージから鳴き声が聞こえてきたのです。ガレージの中、見せてもらえますか?」
オレも黒いジャケットに黒のスリムパンツ着用ではあるが、OKが出た。

「ありがとうございます」
頭を下げて、ガレージに入る。
ハナちゃんは、シルバーの車の下にいた。
しゃがみこみ、人差指を突き出すと、にーと鳴き、鼻先をくっつけて挨拶をした。
とても、人なつっこい猫だ。
「おいで」
と呼ぶと、寄ってくる。
猫を見つけた時の必需品、連れ帰り用の洗濯ネットはいらないようだ。そのまま抱いて帰ることにする。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。