「そういえば、丹田さんが出してくれた、缶コーヒー、蓋が、開いていたな」
な、だろ? と念押す猿神さんに、
「確かにプルトップが、引かれてました」
オレはガッツリとうなずいてみせる。
「あの、猿神さん。中になにか仕込まれていたのでしょうか?」
聞いては見たが、半信半疑だ。
「おそらく、そうだろう。だが動機が見えない。丹田さんは、なぜワシたちを眠らせた?」
「わかりません。それに、服用後すぐに効果を現す薬物ではなく、数時間後に効果が現れる薬物を使用した意図もわかりません。が、」
動機に関しては、わかるような気がする。
恨み、腹いせ、報復、はたまた単なる嫌がらせ、等々等々、猿神さんにかかわって来ても不思議ではないと思われる言葉が次々頭に浮かぶ。
「が、なんだ?」
「・・・もしかしたらですが、優秀過ぎる探偵の猿神さんなら、いえ、猿神さんだからこそ、いろんな動機を誘発しそうな行動をとったことがある、とか?」
「とか? だと? おまえは、ワシが今までに解決してきた事件に関連する人物の逆恨み、のようなものも考えられるとか、考えているんじゃないだろうな?」
「い、いえ」
「いいか、よーく、聞け、自慢じゃないが、ワシは、今まで、ややこしい依頼は受けたことがないっ!」
「・・・…」
ほんとうに、自慢じゃないと思います。