猫アンテナ狂想曲(7/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「先ずはとにかく、確認だ」
「確認、ですか?」
「丹田さんの家に行く」
「そして、飲まされた缶コーヒーの缶に付着した成分を調べる、ですね。でも、あれから8時間近く経っています。証拠隠滅には十分過ぎるくらいの時間が」
「うーむ、一理ある」
猿神さんは、しおしおとおこたの上に置かれたみかんに手を伸ばす。

「それに、陽はとっくに落ちています」
「そうだな。秋の日は釣瓶落とし。冬の日はブルーインパルスの急降下、うふっ」
オヤジギャグを滑らせながら、みかんの皮をむき、ぽいぽい口に入れていく。
「夜、暗い時に、怪しい場所に行くのはよしましょう」
「怖いのか?」
と、手の甲をこちらに向ける。

「ユーレイなんか、怖くないです! 危険回避です!」
「バカか、おまえは。な、アキラ、探偵たるもの危険を回避してどうする。むしろ、危険な所に乗り込んで行ったりするから、カッコいいんじゃないか」
猿神さんは胸を張るが、オレには、その自信がどこから湧いて出てくるもなのか、根拠がさっぱりわからない。
なんの準備もなく、無防備に・・・、でもないらしい・・・、のか?

2個目のみかんの皮をむき、丸ごと口に押し込んで、むせながら部屋を出て行った猿神さんは、ヌンチャクを手に戻ってくると、奇声張り上げ、技を披露してくれた。
おっ、意外と、イケる!
予想以上にカッコいい!
3個目のみかんに、またもやむせながら部屋を出て行った猿神さんは、今度はフェイスガードに双眼鏡を取り付けたようにも見える、なにやら怪しい装置を装着している。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。