8 見えない敵
外は、寒い。
朝、ふわふわだった雪は、ガジガジに凍りついている。
「キャロちゃんも、お留守番だな」
猿神さんは判断し、オレたちは歩き始める。
夜になり、めっきり人通りの少なくなった道を、丹田さんの家を目指して。
朝よりも若干のスピードを加えて、歩く。
家に着いたが、明かりは無かった。
『売り家』
暗視スコープゴーグルが映し出したのは、この3文字だった。
「許さん! 奴らは、ワシをハメやがったのか!」
猿神さんが、売り家の〝り〟の字にグーでパンチを決める。
「落ち着いてください、猿神さん。こんな所でこんな時間に暴れたら通報物です。で、奴ら、って何者なんですか?」
「わからんに決まっているだろう? おまえ、アキラ、助手のくせに、そんなこともわからんのか?」
「でも、ハメられるって、なにか身に覚えがあるんですか?」
「身に覚え、とな?」
「はい」
「う~ん、ない!」
「腹いせや嫌がらせにしては、やり方が大がかり過ぎるような気がしますし、報復にしては生ぬるいような気が・・・」
「しないでもないな。とにかく、一応、中を確認しよう」