猿神さんは、カチャカチャカチャ、小さな金属を操ってドアを開けた。
そろりと中に、忍び込む。
人の気配は感じられない。
猫の気配も感じられない。
オレたちが通された応接間にテーブルこそあるものの、他の部屋は、なにもない。
コーヒーの空き缶も、残っていない。
やはり、証拠は隠滅されていた。
「丹田不動産と書いてありましたよね?」
『売り家』のプレートの下にあった文字を思い浮かべ、提案してみる。
「明日、訪ねてみましょう。なにか手掛かりがつかめるかもしれません」
「奴らが、正当な手続きを踏んで、ここを利用したと思うのか?」
「・・・思いません」
だが、正当な手続きを取らなくても、ここにこうして侵入出来るのは、実証済みだ。
「とにかく、今日は、引き揚げませんか?」
「そうだな。明日、白川に調べさせよう」
「白川さんって、猿神さん、自分で調べるんじゃ・・・。探偵魂に点いた火は?」
「一旦、消すことにしようかな」
もう、まったく!
それにしても、猿神さんは、一体全体、なにに巻き込まれているのか?
オレが、解決してやろうじゃないか!
見えない敵に、オレは闘志を燃やす。