王様になれなかったくま(2/4)

さらに数年たったある日のことです。ハチミツをほおばるチャロを見て、村長はうかない顔をしています。
「なぁチャロ、お前はここに来て何年もたつのに、ほとんど大きくなっていない。大きくなったら森を守ってもらおうと思っていたが、それはむりのようだ」
ほかの動物たちも、「やっぱり」と顔を見合わせています。
おどろいたのはチャロだけです。

「なんで! ぼくは強いくまになるんじゃないの? 森の王様になって、みんなを守るんじゃなかったの?」
村長は首を横にふりました。
「大きくならなかったが、お前は十分役にたっているよ。お前のハチミツは、みんなを元気にしてくれる」
「そうよ。大きくなくても、ずっと友だちよ」
「そうだよ。これからもずっとなかよしだよ」
カリンとクルミも、なぐさめてくれました。ほかの動物たちも、うなづいています。

「でも・・・でも、ぼくはずっと森の王様になるつもりだったんだ。これからぼくは、どうすればいいの? 強くないくまなんて、くまじゃないよ!」
チャロは、なきながらあなにこもってしまいました。
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山本真由美 について

東京都在住、3児の母です。子ども達が小さい時は育児一色の生活をしていました。 実家のある地方に子ども達と帰省していた時、突然強い風が吹いてきて周りの木々が揺れました。身構える私の横で、2歳の息子は目をキラキラさせて嬉しそうに手を広げていました。風の音、草木の匂い、赤や紫がにじむ夕方の空。そんな一つひとつのことに喜んで全身で感じようとする子どもたちを見て、その感性に届くお話を書きたいと思いました。