王様になれなかったくま(2/4)

1週間がたった、ある寒い日の夜です。
「あけて、チャロ。助けてほしいの」
あなの入り口でカリンがよんでいます。チャロがしぶしぶ戸をあけると、そこにはカリンとクルミが立っていました。

「なんの用だい?」
チャロは、入口のすきまからたずねました。
「カリンのお母さんが病気になって、すごいねつなんだよ。チャロ、ハチミツをとってきてくれないかい?」
なきだしそうなカリンのかわりに、クルミがおねがいします。
「ひどいねつとせきで、ずっと苦しそうなの。もう見ていられないのよ」
カリンの目は、まっ赤にはれていました。

「カリンのお母さんが病気なの? わかったよ、ハチミツをとってくるからなかないで」
チャロは暗い森のおくへ、トコトコ出かけていきました。

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山本真由美 について

東京都在住、3児の母です。子ども達が小さい時は育児一色の生活をしていました。 実家のある地方に子ども達と帰省していた時、突然強い風が吹いてきて周りの木々が揺れました。身構える私の横で、2歳の息子は目をキラキラさせて嬉しそうに手を広げていました。風の音、草木の匂い、赤や紫がにじむ夕方の空。そんな一つひとつのことに喜んで全身で感じようとする子どもたちを見て、その感性に届くお話を書きたいと思いました。