知里幸恵と『アイヌ神謡集』誕生までを描いた絵本

イタリア語で出版

まるで失われかけていたアイヌ文化を、言葉にして後世に残すという使命に生きた人生でした。厳しい境遇の中でも使命を全うしたその生き様に心打たれ、敬意を抱かずにはいられません。また、誰しも人生にはお役目というものがあるのかもしれない、そんな心境にもなります。

本作品はイタリア人の作家、アリーチェ・ケッレル氏によるもので、絵はイタリア在住の画家、はせがわまきさんが手がけています。淡く優しいタッチのイラストが幻想的なアイヌの持つ世界観によく合っています。

元々イタリア語で出版されていた原書を、知里幸恵生誕120年を記念し日本語訳として刊行されました。原書がイタリアで出版された背景には、アイヌ研究の第一人者として知られるフォスコ・マライーニ氏がイタリア人であったことが関係しています。

イタリアにおいてアイヌ文化にいち早く関心が向けられ、大切にされていたことを知り、思わず感激してしまいました。アイヌ文化の持つ価値は人類共通の財産であるということを示しているようです。

日本人である私たちも、アイヌ文化の崇高さに触れてみることで、忘れかけていた本当に大切なものを思い出させてもらえるのではないでしょうか。この絵本がアイヌ文化に目を向けるきっかけになればと思います。

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】