『ぼくを探しに』
シェル・シルヴァスタイン 作
倉橋由美子 訳
講談社
同級生でもあり、今でも一緒に仕事をしているパートナーから、私が17歳になった誕生日プレゼントとしてこの絵本をいただきました。
黒のラインでかかれた絵とシンプルなレイアウトの本に、今まで手に取った絵本とちがう魅力を感じながら、読んでいました。今でも読み返しますが、奥が深くて、大人でも楽しめる絵本だと思っています。
何かが足りない
それでぼくは楽しくない
足りないかけらを探しに行く
ころがりながらぼくは歌う
「ぼくはかけらを探してる、足りないかけらを探してる、
ラッタッタ さあ行くぞ、足りないかけらを・・・」
丸い形の自分に、足りないピース(かけら)をころがりながら探しに行き、さまざまな体験や障害を乗り越えて、やっと出会った自分にぴったり合ったピース。あまりにも調子がよくなり、立ち止まることができなくなります。今まで楽しんできた体験もできなくなったので、そのピースと別れ、またゆっくりころがって行く・・・というストーリーです。
「え~、せっかく出会って完璧だったのに・・・」と当時の私はそう思いました。しかし大人になって読み返すと、足りないものを補おうと試行錯誤するのは自分を高めるため努力することですし、成功すればなお良いことだとも思えるようになりました。
問題が発生した時、一人で抱え込まずに、人に相談したり助けを求めて、自分に足りないピースになってもらう。また、助けを必要としている人のピースになることはとても大切なんだと思います。
しかし、私たちは、うまく物事が進んでいると思っていても、そこには気づかない大切なものを見失っている場合が多々あります。最高だと思っていても驕らず、問題を一つひとつ解決しながら調和を目指し、決して完璧にはなれなくとも、「完璧な人間になろうとする努力」はつづけていかなければならない、それが人間の生き方なのかもしれない、と思います。
これから成長する子どもには、いろいろ体験し、理想の自分を探してほしい。そして、その途中で自分を見失うことなく、ありのままの自分を認めてほしいと、大人になった私は、切に思うのです。
(ナークツイン 荻原慶子)