目が覚めたらボクは、かごの中に寝ていた。
みどりに囲まれた庭の中で、とってもすてきなところだ。ちょろちょろと水の音がきこえてくるので見回してみたら、大理石の魚の口から吹き出している泉があった。
ここはどこだろう。どうしてこんなところに寝ているんだろう。
ボクはどこでなにをしていたのだろう。どうしても思い出せないんだ。
あ、そうだ、とつぜん、爆音みたいのがきこえてきて真っ暗なやみの中に落ちていった気がする・・・そしてそのまま。
泉の水にちょっと前足をかけてみた。
とっても気持ちがいい。軽い頭痛がして、のどがかわいていたから少し水を飲んで、それから、鉄の格子戸の門をすりぬけて、あてもなく歩きだしたのだった。
さてどこへいこうかとぼんやり考えながら・・・。
何時間も歩いて、夕方小さな湖のある町にたどりついた。
オレンジ色にそまった湖で こどもたちが泳いだりボートをこいだりして楽しそうだ。おとなたちはベンチや教会の階段にこしを下ろして笑ったり、むちゅうに話をしたりしている。
レストランがあって、おおぜいのお客さんが食事をしている。
おいしそうなにおいで目がまわりそう。今日はなにも食べていないんだもの。
うろうろしていると、ボクよりもずっと体の大きいクロネコが話しかけてきた。
「はらがへってるんだろ? だったらオレについてこいよ。ごちそうにありつけるところにつれて行ってやるからさ」
ボクとクロネコくんはレストランの裏にまわって、台所の入り口のところに行った。
ドアが開いているので、中に入ろうとしたらクロネコくんに叱られた。
「おい! 入っちゃあダメだよ。ぶっとばされるぞ。ここで待っていればオレたちに気がつくんだからさ」
やがて白いエプロンの男が皿を持って出口のところまで来ると、
「このごろの客はまったくぜいたくだよ。こんなうまいものをほんのちょっと口にして、それでおしまいだ。ほら、これを食べな。けんかしないで仲良く食べるんだぞ」
そう言って表に出してあったアルミの器に料理をうつすと中へ入って行ってしまった。
おなかがすいていたので、とってもおいしかった。