いつのころからでしょう。
少女は思い出そうとします。
いったい、どれほど前からここで星のかけらを、たったひとりで拾っているのか。
少年はいつからあそこにいるのか。
思い出し、考えようとすると、少女の頭の中は、かすみがかかったようになります。
朝起きて、着替えて、川で顔を洗い、髪をとかし、透明な水と魚を飲むこと以外の記憶が、少女にはないのだ、ということを、少女は、かすみの頭の中で、何度も気づくのでした。
川の色が、夕暮れを告げるすみれ色に変わるころ、バケツはいっぱいになります。
きょうのかけら拾いは終わりです。
いっぱいになったバケツを岸辺におくと、少女は、またひとすくい、水と魚をすくいます。
それを飲みほしたあと、向こう岸に目をやります。
たいてい、少年は、まだそこにいました。
少年はこちらを見て、少女に手をふることもありますし、星のかけらを拾うのに夢中で、少女の視線に気がつかないこともあります。
少年に向かっておじぎをしたあと、夜が川を包む前に家に帰らなくては、と少女は川から出ます。
重いバケツを持って、家に着くころには、たいてい陽はすっかり暮れています。