それから、また、せっせと、水くみや、洗たくにせいを出し始めました。まるで、セムがそこにいることなど、忘れてしまったかのように。
でも、セムは、井戸ばたの石にこしを下ろしたまま、おかみさんの言ったことを、じっと、考えていました。
(もし、にょうぼうにするなら、だれがいいかって? 水車小屋の娘も、かじ屋の娘も、国中、どこを探したって、あんなべっぴんは見つかるまい。だが、長年連れそうとなると、考えものだぞ。ううむ・・・)
セムの心の中で、どんどん、望みがふくらんでいくことに、だれも気づきませんでした。
やがて、あみ上がった花かんむりを頭にのせて、3人の少女が、そろって、井戸の方へやって来ました。まるで、「ねえ、だれが一番きれい?」とでも言うように。
その様子を、目を細めて見ていたセムは、とつぜん、立ち上がって、つかつかと、少女たちの方へ歩いて行きました。
「あれ、あんた! まさか、本気で!?」
おかみさんたちが気づいた時には、もう、手おくれでした。セムは、一人の少女の手をつかんで、さけんだのです。
「これが1つ目だ! 1つ目の願いだぞ!!」