3つの願い(5/5)

文・伊藤由美  

5 そして、地獄へ

地獄へ下りる道で、東からやってきた魔女が、西から帰ってくる魔女に出会いました。
東の魔女の後ろには、死人たちが、ぞろぞろ、ついてきていましたが、西の魔女は、だれも連れていません。

「おや、どうしたんだい? 手ぶらかい?」
東の魔女が聞きました。
「それが、聞いておくれよ」
西の魔女が、ため息まじりに、言いました。

「かれこれ70年前、あたしは、一人の兵隊に、指輪を与えたんだがね」
「ああ。指輪の魔法で、3つの願いをかなえてやったわけだ?」
「それが、とんだめがねちがいでねえ・・・」
「どういうことだい?」
東の魔女にうながされて、西の魔女は語り始めました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに