「兵隊の最初の願いは、村の娘っ子だったんだ。ところがさ。娘っ子の方が、先に、兵隊にほれちまったんだよ」
「何だって! 指輪の魔法が働く前にかい!? とんだはねっ返りだね! つつしみというものを知らないのかね!」
「まったくだよ。親はどんなしつけをしていたものやら。おかげでこっちは空ぶりさ」
東の魔女は、すっかり、同情してしまいました。
「気の毒に、あんたほどの優れた魔女が・・・。だがさ、2つ目は、うまくいったんだろう?」
西の魔女は、今度も、しぶい顔です。
「あの男の2つ目の願いってのが、子供だったんだ」
「ふうん。いかにも、みみっちい願いだね。だが、おまえさん、今度はかなえてやったんだろ?」
西の魔女は、いまいまし気に、首をふりました。
「ほんとに、あんな間ぬけな夫婦は見たことがないよ! 男が、『にょうぼうに子供を!』と、指輪に願った時、にょうぼうのお腹には、とっくに、赤んぼうがいたのさ!」
「なんとまあ!」
「にょうぼうは、ただ、ていしゅの方が、家ちくの世話だ、かり入れだと、忙しかったもんだから、言いそびれていただけだったんだよ」
「じゃあ、2つ目の願いも!?」
「指輪の力は使われずじまいだよ」
東の魔女は、「こんな悪い話は聞いたことがない」とまで言って、西の魔女のかたをさすりました。
「ああ、これ以上、聞くのがおそろしくなったよ。けど、よかったら、話してくれないかい? そのとうへんぼくの最後の願いは何だったんだい?」
西の魔女は、どっと、かたを落としました。