13 チョウコの涙
いつの間にか、朝になっていた。
ずっと一緒にいたいと捜したが、賢作さんの姿はなかった。
しのさんの姿も、見えなかった。
他の方々も、あたしには、見えない。
見えるのは、別に見たいとも思わない策作じいさんだけだ。
「おはようございます」
「キツツキ、今日は、海や。昨日、川で見つけたやつは、大きすぎて、お精霊舟に積めんさかい」
「あの・・・、今日は、『魂送り』の日です」
「そうやな」
「あの・・・、送る準備とか、心の準備とか、・・・いろいろな覚悟とか、しなくてもいいんですか?」
「アホか、キツツキは、あっ、あかん、ゆうてしもた」
「ぷふっ、大丈夫ですから、そんなに焦らなくても。もう、泣きませんから」
「そうか。ほんなら、ええけど」
「はい」
「あのな、キツツキ」
「はい」
「他の時はしらんけど、だれかを見送ったり、別れたりする時はな、」
「はい」
「心の準備とか、覚悟とかはな、するだけ無駄やで」
「はい?」
「準備なんぞしといても、覚悟なんぞしといても、いざという時、さみしいもんはさみしいし、悲しいもんは悲しいんやから」
「・・・・・・」