それからおだやかに話しかけます。
「おきゃくさまは読書をなさいますか?」
とつぜんのしつもんにハリネズミはとまどいましたが、「はい」と返事をしました。
「家にこもっていますから、本を読むことしか楽しみがありませんので」
「どんな本がお好きなんでしょう」
「そうですねぇ・・・、せめて本の中だけでも明るくありたいと、ハッピーエンドばかりの本を読んでいます」
「いいですねぇ、わたしもハッピーな物語は好きですよ。仕事につかれて気分がおちこんだ時に、そのような本を読むと元気が出てきます」
「ですよね! あっ、いや、・・・ぼくもそんな世界で生きてみたいとゆめ見ているんです」
「本を読む時に、お茶はしますか? わたしは紅茶とクッキーをかたわらにおいて、本を読むんですよ」
「あっ、おんなじです! ぼくも食べものと飲みものは読書にかかせません」 「どんな場所で本を読みます? わたしはベッドの上でうつぶせで、ゴロゴロしながら読んでいます」
「ぼくはカーペットの上にねそべります。カーペットのちょっとかたい、けれどもこもこした感じが心地よくて」
「ああ、分かります。たしかにやわらかいものもいいのですが、ちょっとかたくてつめたい感じも悪くないんですよね」
サワガニとハリネズミは小さく笑い合いました。