ぼくたちは夏の道で(12/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

12 ちび夏のもとへ

山野辺美好さんと旧交を温める暇もなく、もちろん、いろいろな余韻にひたる暇もなく、黒岩さんは、次の依頼主の所に向かわされている。
「だいたい、先輩にグッジョブ! なんて、みーちゃんもみーちゃんだけど、みーちゃんの姿を見たとたん、ウインクをしまくる先輩も先輩だ・・・」
ハンドルを握りながら、文句を言いまくる。

「黒岩さん、山野辺さんは、たぶん、猿神さんにイヤミを言ったのではないでしょうか? みぞおちパンチをする時の顔、ちょっと憎しみがこもっているようにも見えました」
「なるほど!」
「それと、猿神さんは、ウインクはしていませんでした」
「いやいや、していたんだよ先輩は。ほら、こんな風に」
黒岩さんはふり向いて、後部座席のぼくに、パチパチと両目をつぶってみせる。
「黒岩さん、わかりました! だから、前を向いて運転してください!」

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。