4 がめ島へ
「およいで・・・」
確かに、岸から島まではとても近いように見えますし、波もおだやかです。
それに、島まで点々と連なる岩をたどれば、浩一や大介ならば、楽におよぎわたれるのでしょう。
(でも、あたしたちにはとてもむり)
美里は海水浴場で足が届かなかった時のこわさを、ありありと、思い出しました。
「待ってよ、大ちゃん。こうちゃんが、『島には行くな』って言ったでしょ」
「だまってれば分からんよ」
二人のとまどいをよそに、大介は船着き場の階段を、まるで銭湯のお湯にでもつかるように、とんとんと、下りていきます。
「大ちゃんてば!」
ふり返った大介は、やっと、事情がのみこめました。
「あ、そうか。みーちゃんもしんちゃんもこわいんやな。なれてないもんな」
大介は、ぴょんぴょん、もどって来ました。
「だったら、歩いてわたれるように、おれ、魔法をかけてやるよ」
「魔法?」
「うん。見てて」
大介は島に向かって、かっこよく、両手を広げ、
「海よ、開け!」
と、さけびました。