9 体験ゾーン
「ありがとう、みーちゃん。おれ、死ぬところやった。ここ、こわいところや。早く出よう。でないと、3人とも、ほんとに死んじまう」
立ち上がった大介はきょろきょろと見回し、やっと、新一のいないことに気が付きました。
「あれ、しんちゃん、まだ便所?」
「ちがうの」
美里はふるえる声で新一に起こったことを話しました。
聞き終わった大介は、「ううむ」と考えました。
「ここはおれら、子どもではどうにもならん。助けをよびに行こう。警察に知らせるんや。早く、しんちゃんを助けな」
「それがね。さっき、外に助けをよびに出たんだけど、がめ島から岸まで、もう、海にもどっているの。ケータイはないし・・・」
「おれ、およげるよ。向こう岸まで行って、助け、よんでくる!」
「もう、そんなひま、ないかもしれないの。時計を見て」
美里はタブレットを大介に見せました。
「竜宮時間の時計は止まっているけど、陸(おか)時間の方は、ゲームが始まってから、もう、30分、過ぎているの。最初に、ゲームの制限時間は1時間とガイドが言ってたでしょ」
「うん。それで?」
「あの話が本当なら、あと30分で竜宮時間に切りかわるってこと。そしたら・・・」
「時間が100倍のスピードで進むってことか。やばいな。早く、しんちゃんを見つけて出ないと、おれら、リアルうらしま太郎になってまう。けど、探すたって、ここ、バカみたいに広いなあ」
「そうだ、アバター!」
美里はタブレットの新一のアバターをおしてみました。