月はグングン昇って、野原を真っ青に照らしました。
野原には風が渡り、風が吹いた野原の辺りは真っ青色をやや透(す)き通らせたようで、いくぶん透明(とうめい)に見えました。
先ほどとはまた別のポプラがいいました。
年寄りのポプラで幹が太く地面にどっしりと根付いています。とても威厳(いげん)のある姿に見えました。
「あんたがいてわしらがいる。それでまあるくおさまっているのだ。あんたはわしらがいるから日々を安心して過ごせるという。わしらもあんたがいるおかげでこうして誇らしく立っていられる。お互い様なのだ。あんたとわしらでやっとまあるくなれたのだ。ひとつのきれいな風景になれたのだ」
イチョウは月をながめながら胸をいっぱいにして黙っていました。
しゃべる必要はありません。
なぜかといえばふたりは今、全く同じ気持ちでいるからです。
他のポプラたちも少し笑ったようでしたが、口を開くものはありませんでした。
月がてっぺんまで登り、世界の全てを湖の底に沈めてしまった頃、イチョウは安らかな寝息(ねいき)を立てていました。
ポプラたちはそれを認(みと)めると、安心して眠りに入っていきました。 (おわり)