この日の学校からの帰り道、ぼくは、べにちゃんにネクタイとの取っ組み合いのいきさつを話した。また、今までの嘘をすべて話した。
本当は今日までは、ネクタイを、いやなやつだと思っていたこと、手紙を渡すのが怖く、気持ちがたかぶって取っ組み合いになってしまったこと。
そして、べにちゃんが大好きだということを。
べにちゃんは話せば話ほど、目をまん丸にして驚いていた。
べにちゃんにずっと嘘をつきつづけるなんて、できやしない。そんなのは、ぼくとべにちゃんなんかじゃない!
今のぼくの気持ちのなんと澄んだことか! ぼくに嘘はない、これだけでぼくの気持ちのなんと誇らしいことか!
その夜、ほくは群青色の窓を開けて眠った。
すっきりとした、春の夜気を感じたかった。
部屋を春でいっぱいにしたかった。
澄みわたる青空のもと一帯に群衆を集め、ぼくは目の前に並んでいる、お釈迦さまとイエスキリストさまと閻魔さまに、べにちゃんがいかにステキか、ネクタイのやつが鼻につくところもあるけれど、どんなにいいやつかということを、得意げに説教している光景だった。