やりたい気もちの箱をあけてみよう
その晩は家でも「チアリーダー」の話題でもちきりでした。
「スタジアムで見たようなチアリーダーにソラもなれるぞ〜!」
「ソラ、チアリーダーになりたいって、言ってたものね〜。良かったわね!」
パパもママもソラがオーディションを受けると決めつけているようです。
「トータッチできないとダメだもん」
ソラは乱暴に答えると、テレビをつけました。
「あらぁ、トータッチってなぁに?」
とあっけらかんと聞くママ。ソラは答えたくなかったので、わざとテレビのボリュームを大きくしました。
「こういうヤツだろ?」
お兄ちゃんがぶかっこうに前後に足を開いてジャンプしました。
「それって『きんちゃんジャンプ』じゃないの?」
「ママはずいぶんとなつかしいこと言うなぁ」
ママもパパもお兄ちゃんもお腹をかかえて笑っています。ソラは自分の部屋に、にげたくなりました。でも、それもこどもっぽい気がして、必死でがまんしました。
「ふ〜む。トライアウトまで1か月もあるのになぁ。もったいないなぁ。自分でできないって決めちゃって」
パパはチラリとソラを見て、ぼそっとつぶやきました。
「それ、ボクのこと?! ボクができないって決めてるってどういうこと?」
ソラは自分でもなぜ、そんなにむきになったのかわからないくらい、ものすごいけんまくでパパにつめよりました。
「ソラはやりたくないのかな?」
パパは落ち着きのある低い声で、ソラに聞きました。
「だって・・・だって、ボク・・・」
ソラはパパをジッと見つめました。
「やりたい気持ちの箱は、ソラにしかあけられないんだぞ」
「やりたい気持ちの箱?」
「ああ、そうだよ。やりたい気持ちの箱は、自分であけるものだ。自分で限界を決めなければ、可能性は無限大にひろがっていくぞ」