まいにち、七ひきもの子どものせわは、たいへんです。つかれもあってか、ある日、メイヤがびょうきになってしまいました。
ガブリは、『今日こそ、ヤギをおなかいっぱいたべてやるぞ』とおもいながらも、子どもたちにごはんをつくっているうちに、そのことをわすれてしまいます。
それに、ごはんをいっしょにたべているうちに、おなかもいっぱいになってしまうのでした。
メイヤがよくなるまで、ガブリはてつやでかんびょうしました。
メイヤがねこんで三日目のよなかのこと。おなかのすいたガブリは、こんやこそ、メイヤをたべようと、大きく口をあけました。
そのとき、ゆめをみていたメイヤは、ねごとをいいました。
「ガブリさん。ほら、あそこにもピンクのお花がさいているわ。きれいねえ。ここでおべんとうをたべましょうか」
そうして、にっこりほほえんだのです。
ガブリはおもわずあけている口をとじました。
あけがた、メイヤが目をさますと、ガブリがベッドのよこのいすにすわって、うつらうつらしているのが目に入りました。
《私のかんびょうまで、こんなにいっしょうけんめいしてくれる人なんて、ほかにはいないわ》
そうおもいながら、ガブリのねがおを見つめました。
《でも、ガブリさんはオオカミ・・・》
そんなことをおもっているうちに、メイヤはまたねむってしまいました。
おひるすぎのことです。ねつも下がったメイヤは、ようふくにきがえました。
「もうすこし、ねてたほうがいいんじゃ」
「もう、だいじょうぶ。ガブリさん、ほんとうにかんびょうありがとう」
じっとガブリを見つめていたメイヤは、おもいきってガブリにいいました。
「もしも、もしもなんですけど、よかったら子どもたちのおとうさんになってやってくれませんか」
ガブリはいっしゅんぽかんとしました。
「ヤッター、ガブリさんがおとうさんだ!」
ガブリは、子どもたちの大よろこびするこえにおもわず
「はい、ぜひ!」と、へんじしていました。
それからというもの、ガブリは、メイヤと七ひきの子ヤギたちと、しあわせにくらしました。
いまでもヤギをたべたくなることのあるガブリですが、そのたびに、それをわすれてしまうできごとがおこるみたいですよ。