「おかあさん、まってぇ」
ヒヨコはトコトコおいかけます。
「だ、だから、オレさまは、おまえのおかあさんじゃないってんの」
ニョロニョロニョロと、ニョロタはにげます。
トコトコ ニョロニョロ トコトコ ニョロニョロ
「おかあさーん」
「おまえなあ、いいかげんにしろよ。なんどもいってるだろう。オレさまはおまえのおかあさんなんかじゃない!」
おかあさんをおいかけるのにひっしで、ヒヨコには、そんなニョロタのこえなんてきこえません。
ニョロタはどんどんにげました。
そうして、もう、ここまではついてきていないだろうと、うしろをふりむきました。
「げっ」
ヒヨコはあきらめることなく、すこしはなれながらもおいかけてきています。
「まったく、しぶといやろうだぜ。そうだ、ここならさすがのあいつも見つけられないだろう」
ニョロタは、木の上にスルスルスルとのぼりました。
しばらくして、ハアハアいいながら、ヒヨコがやってきました。
「おかあさーん。おかあさーん。どこへいっちゃったのー」
ヒヨコは、おかあさんがきえたあたりをひっしでさがしましたが、見つかりません。
「うえーん。おかあさーん」
そのうち、ひよこはなきつかれて、ねむってしまいました。
「やっとあきらめてくれたぜ」
ニョロタは、ほっとしました。
だけど、ほっとしてうれしかったはずなのに、ヒヨコのことが気になってしかたありません。
「オレさま、どうしちゃったんだろう」
しばらくしても、ヒヨコがピクリともうごかないので、ニョロタはしんぱいになってきました。
「まさか、しんじゃいねえだろうな」
スルスルスル
ニョロタが木からおりて、ヒヨコのそばまできてみると、スースーねいきがきこえてきました。
「なんだこいつ。しんぱいさせやがって」
そういいながらも、ニョロタはほっとしました。
「かわいいねがおしてやがるぜ」
だからちがうんだってば(2/4)
文・山庭さくら 絵・井上真一