『きつねのホイティ』
シビル・ウエッタシンハ 文と絵
松岡享子 訳
福音館書店
書店で表紙を見た瞬間に「なんてきれいなの!」と思って手にしたのが、この絵本でした。キツネがまとった布の色が鮮やかなピンク色! 絵本を広げると、表表紙と裏表紙が続いて一つの絵になっていて、森の生き物たちが笑っています。それを見て、「早く読んでみたい! どんなお話かしら?」というワクワク感が、一層広がりました。
この作品は、スリランカの小さな村に住む3人の元気なおかみさんと、村はずれに住む、食いしん坊ギツネのホイティが繰り広げる愉快なお話です。
お腹をすかせているホイティは、村にやってきて3人のおかみさんたちをだまし、ご馳走を手に入れます。それに気をよくしたホイティはおかみさんたちの悪口を歌にしてルンルン気分。その歌を聞いたおかみさんたちは、仕返しをしてやろうと話し合い・・・。
日本にも人間と動物が知恵比べをするお話がありますが、それとは違う意外な結末が待っています。おかみさんたち人間とキツネのホイティのやりとりがおおらかでクスっと笑え、読み終わったあと、とても幸せな気持ちになります。
シビル・ウエッタシンハさんは、スリランカ生まれで、自然豊かなところで育ったそうですが、だからこそ、この明るくのびのびとした絵本が生まれたのでしょう。
この絵本の魅力はストーリーが面白いのはもちろんですが、なんといっても、細部にわたって表情豊かに描かれた絵にあります。ホイティやおかみさんたちの表情が、生き生きと描かれています。各ページにネコが登場するのですが、そのネコが場面に応じで作る表情には笑ってしまいます。
ぜひ、この猫にも注目してみてください。どのページも、村人たちの生活の様子がよくわかる絵が描かれています。そのスリランカの人々の生活も興味深いです。見返しの部分には、女性たちの暮らしぶりのわかるイラストが描かれていまので、ここもお見逃しなく。
もう一つの魅力は、ホイティが浮かれて歌う歌にあります。とてもリズミカルで、きっとお子さんたちは、この場面を一緒に歌うのではないかしら。
のびのびとした線で描かれた絵は、見ているだけでこちらまでのびやかな気持ちになります。
キツネのホイティとスリランカの村に住むおかみさんとの、クスっと笑える愉快なやりとりを、ぜひ楽しんでください。
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