『リスとお月さま』
ゼバスティアン・メッシェンモーザー 作・絵
松永美穂 訳
コンセル
この作品は、美しい表紙に魅かれて手にとりました。
写実的な鉛筆画で多くの色を使わずに描かれているため、鮮やかな黄色の絵具で塗られたまんまるのお月さまがとても目を引きます。リアルなタッチながらも動物のもつ独特な可愛らしさが最大限に表現されていて、動物好きの私にはたまらなく癒される一冊となりました。
物語は絵本の見返しのところから、もうはじまります。
農家の親子の荷車から大きくてまんまるな黄色いチーズが転がり落ち、いきおいよく転がったチーズは、崖でジャンプし下に広がる森の一本の木の枝に着地します。
朝おきて驚いたのは、その枝の付け根の巣穴に住むリス。いったいどうしてお月さまが自分の家に落ちてきたのでしょう。だれかにみつかったら、どろぼうだと思ってつかまっちゃう。そう思ったリスは、木の下にお月さまを落としますが、そこにはちょうどハリネズミがいて、あろうことか背中のとげにお月さまがささってとれなくなってしまいました! ハリネズミはこのまま夜になるたびに月と一緒に空にあがるのでしょうか・・・。
そこへ通りかかったヤギがお月さまにつのをさしてしまい、事態はますます深刻になっていきます。
思い込みが激しく想像力豊かでおばかさんなリスがとても可愛いらしく、他にもボーっとしていて人のよいハリネズミ、マイペースだがあわてんぼのヤギなど、登場するキャラクターが魅力的です。まあるいチーズをお月さまと勘違いして、おおあわてでなんとかしようとする動物たちのコミカルな面白さと、間に挟まれるリスの想像シーンが妙にリアルで笑いを誘います。
エンディングもほのぼのとしていて、大人は、癒しが欲しいときや最近あまり笑ってないなと感じたときに読むといいかも。絵だけのシーンが多く、まだ字が読めないお子さんにもおすすめです。お月さまのお話なので寝るときに親子そろって読むのもいいかもしれませんね。子供から大人まで暖かい気持ちにさせてくれる、そんな素敵な作品です。
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