その日から、早速、ハンスには、王さまの仕事が待っていました。
でも、王さまの仕事って、何でしょう。幸い、おとっつぁんが、今度も、ちゃんと、教えてくれました。
「こら、せがれ。王さまになったからって、いばるでねえぞ。王さまの仕事は、まずは、みんなの暮らしに気をくばるこったぞ」
そこで、ハンスは、まっさきに、高い税金をなくしました。
お城でのぜいたくな暮らしも禁止です。ぜいたくに慣れた大臣の奥方たちには、ひどく、いやがられましたが。
「こら、せがれ。国の人々を、飢えさせちゃ、なんねえぞ。飢えて、人っ子ひとり、いなくなっちまったら、その鳥の巣みてえなもじゃもじゃ頭に、冠、かぶってたって、何になる」
ハンスは、兵隊たちを連れて、戦争で荒れた土地を耕しに行きました。兵隊たちは、
「われらの仕事は戦うことで、耕すことではありません」
と、ぶっちょうずらでしたが、ハンスは取り合いません。それどころか、
「じゃまっけだなあ」
と、王冠を木の枝に引っかけて、自分から、荒れ地を耕しました。これには、兵隊たちも、従うしかありませんでした。
「こら、せがれ。町にねずみがあふれているぞ。悪い病気がはやらねえようにするだ」
「こら、せがれ。街道に盗ぞくが出るっつうぞ。さっさと、取りしまれ」
ハンスがおとっつあんの教えによくしたがったので、人々の暮らしは、日ごとによくなって行きました。