チャリンと音がしました。
お面屋の手の中で、お月さまから外したはずのお面が銀貨に変わっていました。
「外したのは何のお面だったの? 普通のお月さまにしか見えなかったけど」
「普通のお月さまなんてないよ。何かに見えるはずだ。あんたは何に見えたんだい。今晩のお月さま」
「うーん、そうねえ・・・」
トモちゃんは今晩ここに来るまでに見たお月さまを思い出して、そして言いました。
「ひよこの頭みたいだって思ったわ」
「じゃあ、そうだったんだろうさ」
「意味わかんないわ」
「お月さまの顔は見る人によって変わるのさ。ここにあるお面はお月さまがこんな風に見えるって思った、いろんな国のいろんな人の想像力の姿なんだ」
トモちゃんは並んでいるお面に目をやりました。